オフショア開発とは、海外の開発会社や子会社に、情報システムやソフトウェアの開発を業務委託することです。ソフトウェア開発やウェブサイトの開発、アプリ開発などによく活用されます。オフショア開発の主な目的はコスト削減と優秀なIT人材の確保です。
開発のすべての工程を委託するのではなく、上流工程は日本でおこない、プログラミングやテストなどの下流工程のみをオフショア開発することも多いです。
もともと、アメリカが開発コストの低いインドに進出したことがオフショア開発の始まりと言われています。現在では日本もオフショア開発をおこなうようになり、中国やインド、ベトナムに進出しています。しかし、当初の主な目的であったコスト削減のためのオフショア開発は徐々に少なくなり、今では優秀なIT人材を求めたオフショア開発もおこなわれるようになりました。
オフショア開発のメリットを3つ挙げます。
①安価で優秀なエンジニアが確保できることです。
ベトナムなどではIT人材の育成に注力されており、優秀なエンジニアが揃っています。また、人件費の安い国では、技術力を下げずに国内のエンジニアよりも安く現地のエンジニアを手に入れられるという利点もあります。
②短い納期、低コストで優秀なエンジニアを大量に確保できることです。
そのため、大規模開発でも納期も短くすることができます。
③プログラミング言語などは世界共通語であり、言語障壁が低いことです。
異なる言語でもプログラミング言語を通した意思疎通がおこないやすく、開発でないビジネスを現地で展開するよりも言語の壁は小さいと言えるでしょう。
オフショア開発のデメリット
オフショア開発のデメリットを大きく3つ挙げます。
①会話によるコミュニケーションが取りづらいことです。
物理的な距離や言語の壁などがあることで、現地のエンジニアと打ち合わせで詳細な点を意識統一することが難しいです。また、時差が打ち合わせに影響を及ぼすこともあります。
②価値観などが異なり、業務に影響が出る可能性があることです。
国によってビジネスマナーや納期、成果に対する考えが異なり、当初求めていたレベルのシステムを実現できないかもしれません。
③国内情勢に影響されることです。
オフショア開発をおこなう国の政治体制が不安定だと、委託先の企業活動に影響が出る恐れもあります。
オフショア開発の契約形態
オフショア開発の契約形態は「ラボ契約」と「受託契約」の大きく二種類に分類されます。
ラボ契約とは、一定期間定めて委託先と契約する契約形態です。契約されると、委託先の企業のために現地で専属のチームが作られます。ラボ契約では、優秀な人材の確保が可能、急なプロジェクトでも対応可能、固定メンバーのためノウハウが蓄積するといったメリットがあります。
受託契約とは、プロジェクトごとに委託先と契約する契約形態です。契約ごとに委託先と信頼関係を構築しなければなりませんが、プロジェクトごとに契約するので、ラボ契約のように開発の仕事がないときに無駄に費用が発生しないというメリットもあります。
オフショア開発をする際のポイント
オフショア開発をおこなう際に重視すべきポイントを大きく3つ挙げます。
①開発前段階の打ち合わせで希望や仕様書を明確にすることです。オフショア開発ではコミュニケーションが不足しがちです。開発前や開発中でも打ち合わせはこまめにおこない、細かい点のすり合わせをおこなうと良いでしょう。
②ブリッジSEと呼ばれる、日本の発注企業と海外のエンジニアの間の橋渡し的な存在を派遣することです。これにより、開発中もコミュニケーションをスムーズにおこない、開発後に完成品が当初の予定とずれていたなどということを避けることにつながります。
③自社のプロジェクトに合わせて発注先を選ぶことです。また、契約体制も自社に合ったものを選ぶことで、費用を削減したり、より質の高い開発をおこなうことができます。
「オフショア開発」を調べた人はこの用語も調べています
「このアプリの開発はオフショア開発でおこなおうと思う」
アプリのダウンロード数が伸びてもアクティブユーザーが増えないとコンバージョンにはつながりにくいです。プッシュ通知などを用いて、ユーザーの継続利用を促す必要があります。
「オフショア開発中の打ち合わせはとても大切だね」
開発前に仕様の打ち合わせをしていたとしても、それが予定通り進んでいるとは限りません。開発中も現地エンジニアとのコミュニケーションを欠かさないことで、より完成品の質を高めることができます。
「ブリッジSEを派遣して、現地のエンジニアと密なコミュニケーションを取ろう」
ブリッジSEを派遣することで、現場のリアルな状況を把握し、より円滑にコミュニケーションを進めることができます。
「コールセンターの業務をオフショア化しない?」
開発業務以外も海外の企業に業務委託することもあり、このことをオフショア化と呼びます。事務作業やコールセンターなどの業務がオフショア化されることがあります。
オフショア開発のニーズは時代によって変化している
オフショア開発のニーズは時代によって変化しています。オフショア開発が日本で取り入れられるようになった背景は、経済成長により日本のエンジニアの人件費が高くなったことです。そこで、低コストの人材を求めてインドや中国に進出するようになり、オフショア開発が浸透していきました。
しかし、今まで開発を委託してきた国の人件費もだんだん上がり、さらに技術力も上がってきました。日本ではIT人材が不足している背景もあり、当初の目的であった人件費の削減だけでなく、優秀なIT人材確保や質の高い開発を求めてオフショア開発がおこなわれるようになりました。
オフショア開発の反意語「ニアショア開発」とは
オフショア開発の反意語として「ニアショア開発」という言葉があります。
ニアショア開発とは、情報システムやソフトウェアの開発を国内の別の地方や近くの国に委託することです。ニアショア開発の主な目的はコスト削減です。
オフショアに比べ、ニアショア開発はスタッフが行き来するコストを削減し、時差や言語の壁が小さく、コミュニケーションに起因するトラブルを減らすことができるという特徴があります。
日本では東アジアや東南アジアの国に、東京や大阪の企業が東北地方や九州地方などに開発業務を委託することを指します。
有名なオフショア開発会社
有名なオフショア開発として、2つ挙げます。
①株式会社アイディーエス スマラボ
ラボ型の契約で、ベトナムの子会社と日本の開発拠点を組み合わせてプロジェクトごとに最適な課題解決をおこなうことができます。また、日本人管理・責任者によるエンジニアのサポートが充実し、国をまたいだカントリーリスクを低減することができます。
②株式会社サテライトオフィス・ベトナム
ベトナム・ホーチミン市でのラボ型ITエンジニア支援をおこなう会社です。もともとの会社が開発の70%をベトナムに移行したというノウハウを生かして、オフショア開発請負業務サービスを開始しました。エンジニアやブリッジSE、通訳の手配が可能で、ベトナムと日本間のコミュニケーションを円滑化することができます。
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