YouTubeの著作権はどこまで認められている?「ファスト映画」の問題に見るコンテンツの著作権問題

セルリア編集部 2021.06.25

2021年6月23日、映画を著作者に無断で10分程度に再編集してYouTubeにアップロードした投稿者が著作権法違反の容疑で逮捕されました。
「ファスト映画」の具体的に何が問題だったのかやYouTubeでは著作権がどこまでOKなのかなどを考察します。

映画を10分に再編集した「ファスト映画」の投稿者が逮捕された

2021年6月23日、映画を著作者に無断で10分程度に再編集した「ファスト映画」と呼ばれる動画を著作者に無断でYouTubeにアップロードしたとして、宮城県警は3人の男女を著作権法違反の容疑で逮捕しました。

「ファスト映画」とは?

ファスト映画(ファストシネマ)とは昨年春ごろからYouTubeに多く投稿されるようになった動画のこと。

映画のキャプション・映像・静止画などを使って本来2時間ほどある映画を10分程度に再編集し、字幕とナレーションであらすじを説明しているのが特徴です。

中には、あらすじの紹介だけでなく結末までの流れを事細かに説明しているものもあります。

邦画洋画にかかわらず色々な映画がファスト映画としてアップロードされており、中には「ハリーポッター」や「シン・ゴジラ」など有名な作品やヒット作も扱われています。

ファスト映画の総再生回数は4億7700万回、被害総額は約900億円を超えるとも見込まれています。

【参考記事】

初の逮捕者も…ネタバレ“ファスト映画”違法性は?

ファスト映画が増えた背景

ファスト映画が増えた背景には3つの要因が絡み合っていると考えます。

まず1つ目が「映画に割く時間が減ったこと」です。

最近、動画配信サイトにて”倍速視聴”を行うユーザーが増えつつあることからもわかるように、映画視聴に割ける現代人の時間はどんどん短くなりつつあります。

そんな中、ファスト映画は10分でどんな内容か分かることから「便利だ」と視聴するユーザーが多くなってしまったことが考えられます。

2つ目が「新型コロナによる巣篭もり」です。

AmazonプライムビデオやNetflix、Huluなどがコロナ禍でも売り上げを伸ばしたことからわかるように、新型コロナウイルス感染症によって外出できなくなったことから、自宅で映画を楽しもうと考える人が一気に多くなりました。

そのため、映画に対する関心度が非常に高くなっていることも要因であると言えるでしょう。

3つ目が「広告収入」です。

新型コロナによる巣篭もりと映画に割く時間が減ったことでファスト映画はどんどん再生回数を伸ばしていきました。

見る人が多くなればそれだけ投稿者が得られる広告収入も多くなります。

そのため多くの投稿者がファスト映画を作った結果、今のような状態になってしまったといえるでしょう。

問題となっている「著作権法」とは?

今回の逮捕では、「著作権法」に焦点が当てられました。

もちろん、一度耳にしたことはあるかと思いますが一体どんな法律なのでしょうか。

著作権法とは「著作権を守るための法律」

著作権法を簡単にまとめると「著作権を守るための法律」のことを指します。

これを正確に理解するのにはまず、著作者と著作物、著作権について知る必要があります。

著作権法の中では、映画を始め世の中に発表されている小説や楽曲、絵画やアニメ、美術品などは「著作物」と呼ばれており、著作物を作った人は「著作者」と呼ばれます。

映画の場合だと、著作物は映画そのもので著作者はケースによって色々ありますが、映画会社になることが多いです。

著作者には様々な権利があります。

大きく分けると、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」に分けられます。

「著作者人格権」とは簡単に言えば著作者の人格を守るための権利。

著作物には表現内容を通じて著作者の人格があります。

それを守る権利が著作者人格権です。

「著作権(財産権)」とは第三者が著作物を利用する際に使用料を受け取ることができる権利です。

著作物は減速無断で使用することができないので、必ず著作権利者に許可をもらう必要があります。

著作権法はこれらの権利を守るための法律となっています。

著作権法における「ファスト映画」の問題点

著作権法侵害が問題になると、実際に著作権の中のどの権利を侵害しているかはケースや担当の弁護士によって変わります。

今回、どの権利を侵害したのかは明言されていませんが、

  • キャプションや映画内の映像・静止画を複製したこと
  • 著作者に許可なく複製したものが含まれている動画をアップロードしたこと
  • 著作物を勝手に改変したこと

以上の3つが著作権侵害に当たるという見方が多いです。

また、違法なコンテンツで収益を上げていたことも問題となっており、「犯罪者にお金が流れてしまっている」という見方もあるようです。

著作権侵害に関しては奥が深く、法的資格のない者が断言することはできません。

今後、侵害する権利が増えたり減ったりすることもあり得ます。

YouTubeで著作権はどこまで認められている?

ファスト映画の問題で多くの人が気にしているのが、YouTubeで著作権はどこまで認められているのかではないでしょうか。

基本的にYouTubeでは以下のような見解を述べています。

複製、配布、上演、上映、二次的著作物を作成する権利を行使または付与できるのは著作権者のみです。二次的著作物としては、ファン フィクション、続編、翻訳、スピンオフ、翻案などが挙げられます。

注意: キャラクター、ストーリー、著作権で保護されたその他の要素に基づいた動画をアップロードする前に、弁護士から法律上の助言を受けることをおすすめします。

引用元:著作権法は YouTube にどのように適用されますか?

つまり原則的に著作物を使うことは推奨されておらず、使うなら許可をもらってください、という方針になっています。

引用の条件

ただし、著作権法では例外が認められています。

「引用」として使う場合です。

引用で大切なのがまず、引用部分が公表された著作物であることです。

著作物は勝手に変えたりしてはいけないので、そのままの形で使うことが大前提になるでしょう。

また、引用部分が自分の著作物の部分と明確に分かれていること、どこから引用しているかなども明らかにします。

よくあるのが、引用部分を””で囲って「引用:〇〇」と明記する形です。

引用する目的も明確であることが重要です。

意味もなく引用するのは避けるべきでしょう。

さらに最も大切なのが、 自己の著作物がメインであり引用部分はあくまでメイン部分に付随するものであることです。

これらの条件をクリアするのはなかなか動画では難しく、不安な場合は使用を控えることをおすすめします。

映画ネタバレサイトやレビューは著作権でどこまで許されるか

では動画とは別に映画ネタバレサイトやレビューはどうなのでしょうか。

よく映画の内容を起承転結でまとめているサイトがありますし、レビューなんかは内容に触れていることもあります。

著作権を考える上では載している情報がまず誰かの著作物かどうかを検討します。

その上で、引用などに該当するかを検討します。

著作物でない場合や引用などに該当する場合は著作権侵害にはなりません。

著作物であって引用にも該当せず、許可がなく著作物に関する権利が続いている場合は著作権侵害の可能性が高くなります。

これを踏まえると画ネタバレサイトやレビューでも物によっては著作権侵害の可能性が高くなってしまうことが伺えます。

映画ネタバレサイトやレビューは避けるのが最も良いですが、どうしても書きたいという場合はセリフや映像を入れるのではなく、自分の感じたことを感じたまま書くしかないかと思います。

まとめ

コンテンツを作る上で著作権はとてもデリケートでシビアな問題です。

間違った使い方をしないよう日頃から心がけることが大切です。

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YouTubeの著作権はどこまで認められている?「ファスト映画」の問題に見るコンテンツの著作権問題

                           
セルリア編集部 2021.06.25

2021年6月23日、映画を著作者に無断で10分程度に再編集してYouTubeにアップロードした投稿者が著作権法違反の容疑で逮捕されました。
「ファスト映画」の具体的に何が問題だったのかやYouTubeでは著作権がどこまでOKなのかなどを考察します。

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映画を10分に再編集した「ファスト映画」の投稿者が逮捕された

2021年6月23日、映画を著作者に無断で10分程度に再編集した「ファスト映画」と呼ばれる動画を著作者に無断でYouTubeにアップロードしたとして、宮城県警は3人の男女を著作権法違反の容疑で逮捕しました。

「ファスト映画」とは?

ファスト映画(ファストシネマ)とは昨年春ごろからYouTubeに多く投稿されるようになった動画のこと。

映画のキャプション・映像・静止画などを使って本来2時間ほどある映画を10分程度に再編集し、字幕とナレーションであらすじを説明しているのが特徴です。

中には、あらすじの紹介だけでなく結末までの流れを事細かに説明しているものもあります。

邦画洋画にかかわらず色々な映画がファスト映画としてアップロードされており、中には「ハリーポッター」や「シン・ゴジラ」など有名な作品やヒット作も扱われています。

ファスト映画の総再生回数は4億7700万回、被害総額は約900億円を超えるとも見込まれています。

【参考記事】

初の逮捕者も…ネタバレ“ファスト映画”違法性は?

ファスト映画が増えた背景

ファスト映画が増えた背景には3つの要因が絡み合っていると考えます。

まず1つ目が「映画に割く時間が減ったこと」です。

最近、動画配信サイトにて”倍速視聴”を行うユーザーが増えつつあることからもわかるように、映画視聴に割ける現代人の時間はどんどん短くなりつつあります。

そんな中、ファスト映画は10分でどんな内容か分かることから「便利だ」と視聴するユーザーが多くなってしまったことが考えられます。

2つ目が「新型コロナによる巣篭もり」です。

AmazonプライムビデオやNetflix、Huluなどがコロナ禍でも売り上げを伸ばしたことからわかるように、新型コロナウイルス感染症によって外出できなくなったことから、自宅で映画を楽しもうと考える人が一気に多くなりました。

そのため、映画に対する関心度が非常に高くなっていることも要因であると言えるでしょう。

3つ目が「広告収入」です。

新型コロナによる巣篭もりと映画に割く時間が減ったことでファスト映画はどんどん再生回数を伸ばしていきました。

見る人が多くなればそれだけ投稿者が得られる広告収入も多くなります。

そのため多くの投稿者がファスト映画を作った結果、今のような状態になってしまったといえるでしょう。

問題となっている「著作権法」とは?

今回の逮捕では、「著作権法」に焦点が当てられました。

もちろん、一度耳にしたことはあるかと思いますが一体どんな法律なのでしょうか。

著作権法とは「著作権を守るための法律」

著作権法を簡単にまとめると「著作権を守るための法律」のことを指します。

これを正確に理解するのにはまず、著作者と著作物、著作権について知る必要があります。

著作権法の中では、映画を始め世の中に発表されている小説や楽曲、絵画やアニメ、美術品などは「著作物」と呼ばれており、著作物を作った人は「著作者」と呼ばれます。

映画の場合だと、著作物は映画そのもので著作者はケースによって色々ありますが、映画会社になることが多いです。

著作者には様々な権利があります。

大きく分けると、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」に分けられます。

「著作者人格権」とは簡単に言えば著作者の人格を守るための権利。

著作物には表現内容を通じて著作者の人格があります。

それを守る権利が著作者人格権です。

「著作権(財産権)」とは第三者が著作物を利用する際に使用料を受け取ることができる権利です。

著作物は減速無断で使用することができないので、必ず著作権利者に許可をもらう必要があります。

著作権法はこれらの権利を守るための法律となっています。

著作権法における「ファスト映画」の問題点

著作権法侵害が問題になると、実際に著作権の中のどの権利を侵害しているかはケースや担当の弁護士によって変わります。

今回、どの権利を侵害したのかは明言されていませんが、

  • キャプションや映画内の映像・静止画を複製したこと
  • 著作者に許可なく複製したものが含まれている動画をアップロードしたこと
  • 著作物を勝手に改変したこと

以上の3つが著作権侵害に当たるという見方が多いです。

また、違法なコンテンツで収益を上げていたことも問題となっており、「犯罪者にお金が流れてしまっている」という見方もあるようです。

著作権侵害に関しては奥が深く、法的資格のない者が断言することはできません。

今後、侵害する権利が増えたり減ったりすることもあり得ます。

YouTubeで著作権はどこまで認められている?

ファスト映画の問題で多くの人が気にしているのが、YouTubeで著作権はどこまで認められているのかではないでしょうか。

基本的にYouTubeでは以下のような見解を述べています。

複製、配布、上演、上映、二次的著作物を作成する権利を行使または付与できるのは著作権者のみです。二次的著作物としては、ファン フィクション、続編、翻訳、スピンオフ、翻案などが挙げられます。

注意: キャラクター、ストーリー、著作権で保護されたその他の要素に基づいた動画をアップロードする前に、弁護士から法律上の助言を受けることをおすすめします。

引用元:著作権法は YouTube にどのように適用されますか?

つまり原則的に著作物を使うことは推奨されておらず、使うなら許可をもらってください、という方針になっています。

引用の条件

ただし、著作権法では例外が認められています。

「引用」として使う場合です。

引用で大切なのがまず、引用部分が公表された著作物であることです。

著作物は勝手に変えたりしてはいけないので、そのままの形で使うことが大前提になるでしょう。

また、引用部分が自分の著作物の部分と明確に分かれていること、どこから引用しているかなども明らかにします。

よくあるのが、引用部分を””で囲って「引用:〇〇」と明記する形です。

引用する目的も明確であることが重要です。

意味もなく引用するのは避けるべきでしょう。

さらに最も大切なのが、 自己の著作物がメインであり引用部分はあくまでメイン部分に付随するものであることです。

これらの条件をクリアするのはなかなか動画では難しく、不安な場合は使用を控えることをおすすめします。

映画ネタバレサイトやレビューは著作権でどこまで許されるか

では動画とは別に映画ネタバレサイトやレビューはどうなのでしょうか。

よく映画の内容を起承転結でまとめているサイトがありますし、レビューなんかは内容に触れていることもあります。

著作権を考える上では載している情報がまず誰かの著作物かどうかを検討します。

その上で、引用などに該当するかを検討します。

著作物でない場合や引用などに該当する場合は著作権侵害にはなりません。

著作物であって引用にも該当せず、許可がなく著作物に関する権利が続いている場合は著作権侵害の可能性が高くなります。

これを踏まえると画ネタバレサイトやレビューでも物によっては著作権侵害の可能性が高くなってしまうことが伺えます。

映画ネタバレサイトやレビューは避けるのが最も良いですが、どうしても書きたいという場合はセリフや映像を入れるのではなく、自分の感じたことを感じたまま書くしかないかと思います。

まとめ

コンテンツを作る上で著作権はとてもデリケートでシビアな問題です。

間違った使い方をしないよう日頃から心がけることが大切です。

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