NAVERまとめのサービス終了 巨大なWebサービスが幕をおろす背景と影響とは

#深堀りニュース

' 杉山 夏子 2020.07.18

各方面に驚きを与えたNAVERまとめのサービス終了。ここでは、NAVERまとめの歴史とともに、なぜサービス終了に至ったのか考察します。

SHERE!

2020年7月1日、NAVERまとめの公式ブログにて次のような発表がされました。

 

平素よりNAVERまとめをご利用いただき、誠にありがとうございます。​
突然ではございますが、NAVERまとめは2020年9月30日をもちましてサービスを終了することとなりました。​

NAVERまとめ公式ブログ「NAVERまとめ サービス終了のお知らせ」より引用

これには、驚いた方、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。

今回は、NAVERまとめの歴史やサービス内容ともに、なぜ「サービス終了となったのか」を考察します。

 

「NAVERまとめ」とはどんなサービスだったのか?

NAVERまとめは、人の知見・観点を活かした検索結果を提供することを目的に始められたサービスで、提供開始は、2009年7月1日にまで遡ります。

運営会社の名前は幾度となく変わっていますが、現在ではメッセージアプリでお馴染みのLINE株式会社の子会社・ネクストライブラリが運営していました。

一般のユーザーが特定のテーマに基づいて、リンク・画像・動画・テキストを集約して共有した情報(サイト内では「まとめ」と呼ばれている)を検索することができたり、まとめを作成したユーザーはPV(閲覧数)に応じてインセンティブ(報酬)を受け取ることができたりする、というのが主なサービス内容です。

作成された「まとめ」の内容は多岐に渡り、時事ニュースや世間で話題となっているトピック、アニメやドラマなど個人の趣味に至るものまで様々。

多くの人が利用していた分、色々なまとめが作られていたため、自分の好みに合わせて、好きな情報を探し出せる、暇つぶしとして最適だったという理由から人気を集めていました。

 

検索エンジンの上位表示の常連だった「NAVERまとめ」

現在の検索エンジン(GoogleやYahoo!など)はアルゴリズムのアップデートにより、ページの内容を判断して、キーワードで検索しているユーザーのニーズにあったコンテンツを表示させています。

しかし、サービスが提供された頃の検索エンジン(GoogleやYahoo!など)は、現在のようにコンテンツの内容を重視するのではなく、大規模なサイトほど上位(検索結果画面の1位〜10位)に表示させていました。

そのため、NAVERまとめのようなページ数が多いサイトは検索エンジンの結果画面の上位に表示されやすく、「検索結果画面に表示されているサイトのほとんどがNVERまとめのページだった」なんてことも、ざらにありました。

実際、NAVERまとめは、2014年にはサイト全体で23億PVを突破し、約6,700ユーザーを記録したという実績があります。

また、この当時は、お気に入り登録1000を超えていたまとめが7500本を超えていた、ということから、とんでもなく多くのユーザーが利用していたことが伺えます。

 

「NAVERまとめ」ではどのくらい稼げていたのか

インセンティブ の仕組み

NAVERまとめはPV数とインセンティブポイントに応じてインセンティブが決定します。

具体的に1PVあたりいくらというのはありませんが、全盛期であった2014年ごろは1PVあたり、0.2円前後の収益性というのが一般的です。

ですので、1記事あたり100万PVを突破できれば2万円を稼ぐことができました。

中には、累計PV数が2億を超えるまとめもあり、この場合ですと1記事あたり4000万円を稼げたことになります。

とはいえ、インセンティブの集計は月ごとですので、増えた分だけが支払われます。

逆にいえば、まとめを量産しなくともPV数が伸びていれば、毎月一定のお金が入ってきたことになります。

参考記事

 

トップランカー達の稼ぎ

では、トップランカー達が月にどれくらいインセンティブ で稼いでいたのか。

株式会社翔泳社が運営するマーケター向けメディア「MarkeZine」に興味深い記事がありました。

 

本記事によると、これまでのインセンティブ平均受取額は以下のようになっています。

出典:MarkeZine

最も多くインセンティブを稼いだ10人のこれまでの報酬総額の平均は、500万円以上を超えています。

NAVERまとめを通してかなり高額を稼いでいたことは明らかですね。

こういった人たちは、月に数十万円稼いでおり、「まとめ職人」と呼ばれていたそうです。

サービス終了はまとめ職人に大きな打撃

NAVERまとめは今後のスケジュールを以下のように発表しています。

 

今後のスケジュール

2020年7月31日・・・新規アカウント登録の停止

2020年9月30日​・・・サービス終了​/まとめ記事ダウンロード機能の提供

2020年11月上旬・・・最終インセンティブ確定

2020年11月30日​・・・まとめ記事ダウンロード機能の提供終了

2021年2月16日​・・・支払い申請機能の提供終了​​

NAVERまとめ公式ブログ「NAVERまとめ サービス終了のお知らせ」より引用

スケジュールによると、最終インセンティブ確定は11月上旬、支払い申請機能の提供終了は2021年2月16日​です。

この影響はかなり大きく、これまでNAVERまとめで稼いでいた人にとっては、定期的な収入がなくなることを意味しています。

つまり、新しく収入を得る方法を考えなければなりません。

LINEグループがサービス終了に踏み切った理由

NAVERまとめ公式ブログでは以下のように述べられています。

 

サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果、今回の決断に至りました。​
ご愛顧いただいた皆様には残念な結果となり、大変心苦しい限りですが、なにとぞご理解をいただけますようよろしくお願いいたします。​
NAVERまとめ公式ブログ「NAVERまとめ サービス終了のお知らせ」より引用

このように、LINEグループは「事業をサービスの選択と集中の観点などから検討した結果、サービス終了を迎えることとなった」と述べていますが、その奥には次の4つの要因があったのではないかと推測しています。

①Googleの評価が変わった

これまで、検索エンジンはページ数が多いサイトを評価し、上位表示してきたため、NAVERまとめは上位表示されてきました。

しかし、2016年に、DeNAが運営していた医療情報キュレーションサイト「WELQ」に掲載されていた情報の信頼性が問題になって以降、Googleはキュレーションサイトの表示順位を下げるようアルゴリズムを変更。

その結果、NAVERまとめの記事が上位表示されにくくなってしまいました。

また、それ以降、お金をかけて信頼性の高い情報を発信している企業のWebサイトが優位性を保つようになります。

②検索エンジンで色々なことが調べられるようになった

NAVERまとめは、リンク・画像・動画・テキストが集約された「まとめ」が強みでしたが、現在の検索エンジンでは、Webサイトだけでなく、画像や動画、ニュース、ショッピングまで検索できるようになっています。

そのため、わざわざNAVERまとめを利用する必要性がなくなってしまったというのも理由の1つでしょう。

③SNSの台頭

10年前に比べ、リアルタイムの情報はSNSですぐに収拾できるようになりました。

そのため、時間をかけてまとめを作るNAVERまとめのスタイルが時代に合わなくなってきた、というのも要因の1つでしょう。

④著作権問題の深刻化

NAVERまとめでは、悪質なまとめ記事もあり、中には
●他人のブログの内容を流用する
●画像や動画を無断で使用する
といった著作権侵害に触れるまとめも数多く存在します。

あまりにも著作権に触れるようなまとめが多くなってしまったことで、サービス終了をせざるおえなかったということも考えられます。

こういった悪質なまとめが目立ってしまったことから、中にはサービス終了を喜ぶ声もあります。

NAVERまとめを利用していた人はインセンティブ申請を!

なにはともあれ、サービスは2020年9月30日をもって終了します。

ここで注意したいのがインセンティブ申請です。

申請をし損ねてしまうと、受け取れなくなってしまうので、過去にNAVERまとめで記事を作っていたという方は、インセンティブを確認し、早急に申請しましょう。

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