Internet Explorerが使えなくなる?Microsoftの発表の内容とは?

#深堀りニュース

' 杉山 夏子 2020.09.01

2020年8月17日、Microsoftが発表したIE11のサポート終了について詳しく解説します。本当にIEが使えなくなるのか、なぜIEはシェア率が落ちたのかを考察します。

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Microsoftが発表した内容

米国時間の2020年8月17日、Microsoft社が公式サイトである以下のような発表をしました。

画像引用:https://techcommunity.microsoft.com/t5/microsoft-365-blog/microsoft-365-apps-say-farewell-to-internet-explorer-11-and/ba-p/1591666

この発表を大まかにまとめると、内容は

  • チャット・ビデオ通話・ファイルの共有ができる「Microsoft Teams」の、IE11(Internet Explorer11)でのサポートが、2020年11月30日を持ってが終了する
  • 2021年8月17日を持って、Microsoft 365のアプリとサービスの、IE11でのサポートが完全に終了する

とのことでした。

SNS上では、「IEがなくなる」「使えなくなる」と話題になっていますが、実際のところはIE11を介して、「Microsoft Teams」をはじめとするMicrosoft 365のアプリとサービスが利用しにくくなるということでした。
そのため、Microsoft社は新しいブラウザ「Microsoft Edg」を使用することを推奨しています。

IEがなくなるわけではない

2021年8月17日以降、Microsoft 365のアプリとサービスをIE11利用しようとすると、接続できない、新しい機能が使えない、特定の機能が動作しないということは起こるものの、完全にIEがなくなるわけではないようです。
この期間を過ぎても、Windows10でIE11を使い続けることは可能です。

ただ、Windows10からIE11のアップデートは行われておらず、セキュリティ面での修正しか行われていないのが現状です。

IEはなぜ未だに残っているのか?

今後も一応使い続けることはできるものの、アップデートも終了し、新しいバージョンの開発も行われていないIE。
ユーザーからは「IEとMicrosoft Edg、どっちを使ったらいいか分からない」などの意見があるにも関わらずなぜ、未だに残っているのでしょうか。

それを知るには、IEの歴史やブラウザ戦争などを軽く振り返っていきたいと思います。

IEの始まり

最初にIEが開発されたのは、1994年。
開発当時は、ちょうど「第一次ブラウザ戦争」の真っ只中で、Internet Explorerの競争相手となったのはNetscape Navigatorでした。

Microsoftはこの競争に打ち勝つため、1995年に発売されたWindows 95と一緒にInternet Explorerをリリースしました。
その結果、Windowsの普及とともにInternet Explorerのシェア率は高まり、見事Netscape Navigatorを打ち破り、2000年にはIEが市場の9割を占めることとなりました。

IE独自の拡張機能を追加

基本的にIEのようなWebブラウザは、制作されたコンテンツを表示させるだけの閲覧ソフトです。

しかし、インターネットが普及していくのに従って、サイトを閲覧するだけでなく、コンテンツに動きをつけて表示させたり、セキュリティ機能をブラウザ自体に搭載する必要が出てきました。

本来であれば、ブラウザの機能を決めている標準化団体「W3C」が定めたHTLMに沿ってブラウザを開発しなければならなかったMicrosoft。

しかし、1999年以降HTMLの新バージョンのリリースがされなかったため、Microsoftは独自にIEの機能拡張を行なって、規格から外れたブラウザを開発してしまいました。

脆弱性の問題もありシェア率がダウン

W3Cの規格からは外れているものの、便利さはアップし、より使いやすいブラウザとなったIE。
しばらくは問題ありませんでしたが、Google ChromeやMozilla Firefoxなどのが出てきたことにより、第二次ブラウザ戦争が発生します。

しかし、IEはセキュリティ面などの問題が改善されなかったことから、他ブラウザの人気が高まり、2009年前後からどんどんシェア率が低下しました。

IE以外で表示できない

その後登場したGoogle ChromeやSafariなどは、W3Cの標準規格に沿った新しいブラウザです。
また、W3Cは新しいバージョンの「HTML5」もリリースしました。

他のブラウザを利用するユーザーが多くなったことで、問題として浮き彫りになったのが、IE対応で開発したシステムが、他のブラウザには適用できないことです。

例えば、「このサイトはIEでないと正しく表示されません」という表示を見たことがある人も多くいるかと思います。
こういったサイトは、IEの拡張機能に頼ってシステムを開発してしまったため、他のブラウザで正しく表示できなくなってしまっているのです。

企業の対応

IEでしか表示されない場合、改修するか、そのままIEを使い続けるかのどちらかになります。
しかし、社内のパソコン周りの設備も一新したり、大規模な改修が必要になることから、今でもIEを使い続けている企業が一定数います。
そのため、W3Cの標準規格に準拠した「Microsoft Edg」をリリースしているのにも関わらず、IEのサポート終了ができない状態となっています。

IEを使い続けるのは非効率

IEは一時は利便性をもたらしましたが、結果的には各所に悪影響を及ぼしているともいえます。
それが最も顕著な事例が7月中旬に話題となった「マイナポイントの申し込み」です。

現在、政府サイトはIEを前提に設計されています。
そのため、マイナンバーカードとポイントを紐付けた「マイナポイント」の申し込みの際、IE11を使わないと申し込みができないという不具合が発生しました。

現在、シェアでトップを誇るのはGoogle Chromeです。
ですので、IEでしか申し込めないというのは、ユーザーにとっても運営側にとっても、非常に不便であることは明白です。

また、IEは以前から脆弱性が指摘されています。
セキュリティ面も弱く、使っているのもごく少数に限られるため、IEからMicrosoft EdgやGoogle Chromeなど新しいブラウザにシフトすることをおすすめします。

 

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