Facebookの広告主が立て続けにボイコット そこから見える媒体と広告主のあり方とは

#深堀りニュース

' 杉山 夏子 2020.07.12

今、Facebookで大きな動きがあります。
コカコーラやスターバックス、プーマなど900社を超える企業(広告主)が、Facebookで一切広告購入をしない「広告ボイコット」が盛んに行われています。

SHERE!

広告ボイコットまでの経緯

アメリカで黒人男性が白人警官に殺害される

アメリカ時間の2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が白人警官に殺害される事件が起きました。

殺害されたのは、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさん。

白人の警察官・デレク・ショーヴィンによって7分にも渡り首を圧迫され、「息ができない」と助けを求めたのにも関わらず、そのまま死亡する悲惨な事件が起きました。

この事件を受け、全米では事件に対する抗議デモが500都市で発生。

そのほか、デモの動きは日本や欧州にも拡大しました。


「略奪が始まれば銃撃だ」

拡大したデモの多くは平和的なものでしたが、中には暴徒化するデモ隊もありました。

アメリカのトランプ大統領は、デモに対して自身のFacebook・Twitter・Instagramのアカウントにて次のように発言しています。



出典:トランプ大統領のFacebook

投稿された内容には、暴徒化した人々を「THUGS(=悪党、ちんぴら)」として呼んでいるだけでなく、「when the looting starts, the shooting starts(=略奪が始まれば銃撃だ)」と、軍による武力行使をも予告しています。

明らかなヘイトスピーチであることが伺えます。


各SNSの対応

この投稿を受け、Twitterはトランプ大統領の該当するツイートを非表示にするという対応をとりました。

Twitterの投稿を確認すると、「このツイートは、暴力の賛美についてのTwitterルールに違反しています。ただし、Twitterではこのツイートに公共性があると判断したため、引き続き表示できます」という警告文の横に「表示」ボタンがあり、クリックすると投稿を確認できるようになっています。

しかし一方で、暴力を仄めかす投稿であるのにも関わらず、Facebookは一切対応をとりませんでした。

 


Facebookの対応


Facebookが初めて対応をとったのは、投稿が行われた5月29日からおよそ1週間後の6月5日。

しかし、その対応は弱腰というべきものでした。

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは自身のFacebookで次のように述べています。

個人的には(トランプ氏の投稿の)対立を強めるような扇動的な文章には否定的な感情を持つが、「自由な表現に取り組む組織のリーダーとして対応する責任がある。多くの人々が大統領の投稿を表示したままでいることに気分を害していることは理解しているが、ポリシーに明記されている特定のリスクを引き起こさない限り、可能な限りの表現を可能にすべきという立場だ。(中略)投稿には問題のある歴史的参照はあるが、(中略)政府が武力配備を計画していることを人々が知る必要があると判断し、投稿を残すことにした

ITメディア「FacebookのザッカーバーグCEO、トランプ氏の問題投稿を非表示にしない理由を説明」より

また、同時に、

Twitterとは異なり、Facebookには暴力を扇動する可能性のある投稿に警告を表示するポリシーはない

ITメディア「FacebookのザッカーバーグCEO、トランプ氏の問題投稿を非表示にしない理由を説明」より

とも述べています。

しかし、Facebookのポリシーには、暴力や過激な描写があるコンテンツに対してはラベルを追加すると定めていますし、昨年10月には、ザッカーバーグCEOは「危害を引き起こすような投稿は削除する」という旨を述べています。

このFacebookの弱腰とも言える対応を受け、コカコーラやスターバックス、プーマやザ・ノース・フェイスなどおよそ900を超える広告主は広告の出稿を停止しました。


広告ボイコットの背景

広告をボイコットした背景には、もちろんトランプ大統領の発言やザッカーバーグCEOの対応が許せないというのがあるかと思います。

しかし、それとは別に「消費者へのイメージ」を意識している部分もあるのではないかと思われます。

トランプ大統領の発言やFacebookの対応は国民に不信感と不満を与えています。

そんな企業にお金を出して出稿するということは、自身もその考えに賛同していると表しているようなものです。

そういった側面から、ボイコットをおこなったのではないかと考えられます。


企業のお金の使い方は「消費者へのイメージ」を左右する

別の話になりますが、コロナウイルスが騒がれる前、俳優の東出昌大が不倫をしており、妻である女優の杏と別居状態にあることが週刊誌にて明らかになりました。

その際、東出昌大が出演していたホンダのミニバン「フリード」をはじめとするCM4社が相次いで、サイトから広告を取り下げたことが注目されました。。

ホンダのミニバン「フリード」は、ファミリー向けの車。

家族の楽しい!が走り出す」をテーマに売り出しており、不倫を続けていた俳優をイメージキャラクターに据えておくのは、売り上げにもイメージにも関わりるため、広告を下げ今後の対応を検討するという対応に踏み切ったのでしょう。

このように、企業がどこに何に対してお金を使うかは、企業のイメージを大きく左右します。


今後、企業はどんなものに対してお金を出すかよく吟味する必要があるのでは、ないでしょうか

SHERE!