脱ハンコ・オンライン化でDXは実現できる?企業のDXで必要なこととは?

#深堀りニュース

' 杉山 夏子 2020.10.14

今や様々なところで取り組まれているDX。しかし、中にはDXがうまくできていない企業があるのも事実です。ここではDXを成功させるために、どんなことが必要なのかについて考察していきます。

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今や、日本のあらゆる場面で唱えられているDX(デジタルトランスフォーメーション)。
DX化に向けた様々なサービスがリリースされているだけでなく、行政や政府でもDX化のための取り組みが行われています。

しかし、全ての企業でDX化がうまくいっている訳ではありません。
新しいツールなどを導入してもDX化がままならない企業も存在しています。

では、DXを成功させるためには、どんなことが必要なのか。
ここでは、DX成功に必要なことを考察します。

そもそもDXとはどんな概念なのか

DXを行うには、まずDXの本質を学ばなければなりません。

DXという概念が誕生したのは、実は15年前の2004年。
スウェーデンにあるウメオ大学の教授・エリック・ストルターマン氏が、提唱したのが始まりまりです。
教授曰く、DXとは「ITを浸透させて、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させること」と定義しています。

ただ、非常に抽象的な上、世界に比べてIT化が遅れていた日本では、なかなかDXは浸透しませんでした。


経済産業省が定義するDX

日本でDXという言葉が浸透し始めた時期を正確に把握するのは難しいですが、ここまでDXが広まったのには、経済産業省が大きく関係しています。

というのも、経済産業省は2018年に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発表しています。
各国でIT化やDX化の取り組みが行われている中、紙媒体でのやり取りや、業務レベルでのオンライン化が進まない状況に危機感を抱いたのでしょう。
このガイドラインでは以下のようにDXが定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
経産省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン) より

また、このガイドラインの発表と同じ年には、「DXレポート」も発表されており、2018年を境に経済産業省が企業のDXを後押ししていることが伺えます。

経産省が危機感を抱いている「2025年の崖」

経済産業省が必死にDXを推進している理由。それは「DXレポート」内で触れられていた「2025年の崖」が関係しています。

本レポートによると、今までの複雑なITシステムのままでは、多様化していくデータをビジネスに活用するのが困難になること、システムの維持管理費がかさんでしまうこと、IT人材がどんどん不足することが危惧されており、その結果、
最大で年間12兆円の経済損失が発生するという試算も紹介されています。

来たる2025年に大きな損失を生み出さないため、経済産業省はDX関連の制度を充実させたり、積極的にDXに取り組むなどして、企業のDX化を促しているのです。

経産省によるDX化の取り組み

例えば、わかりやすいところで言えば、経済産業省では「IT導入補助金制度(ITツールを導入する企業が必要とする費用の一部を補助金として出す制度)」を整備し、その手続き全てをデジタルで行えるという取り組みを行なっています。

他にも、東京証券取引所と連動して、ITを積極的に活用している企業を選出する「DX銘柄」というものも毎年選出し、様々な面から企業のDXを促しています。

また、企業に呼びかけるだけでなく、経済産業省でもDXの取り組みが行われています。
先に紹介したように、手続きを電子化するだけでなく、簡単で楽にするといったことや、オンラインを活用したツールの導入を行なっています。

クラウド化・オンライン化でDXは本当に達成できる?

さて、これだけ見るとDXに効果的なサービスを導入すればDXが完了するようにも思えます。
特に、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、リモートワークやテレワークなどで、「脱・はんこ」や「紙ではなくクラウドでの共有」、「対面ではなくオンラインでのやり取り」の動きが広まりました。

しかし、こういった取り組みだけで本当にDXができたと言えるでしょうか?

業務を効率化することがDXのゴールではない

例えばクラウドで書面や情報を共有したり、オンラインツールを導入してミーティングを行なったりすれば、書面の印刷や移動時間を削減できるので、非常に効率が良くなります。
ですが、今までのビジネスモデルに大きな変化が生まれなければ、状況が変わることはありません。
厳しい見方ですが、「ただ単に、作業がしやすくなった」というだけでしょう。

「ITの力を使って利益に繋げること」がDXの最終的なゴール

ではDXのゴールとはなんなのか。
私は、DXの最終的なゴールは、「業務を効率化した上で新たな利益につなげること」ではないかと考えています。

例えば、経済産業省が導入したSansan株式会社の法人向けクラウド名刺管理サービスを例に考えてみましょう。

名刺は紙媒体という特性上、誰がどんな人の名刺を持っているのかは、第三者からはわかりにくい状況だったので、どこにどんな人脈があるのか可視化できないという課題がありました。

そこに、クラウド名刺管理サービスを導入すれば、誰が誰の名刺を持っているのか可視化できるので、組織全体での情報共有が可能になります。

ですが、ここまででやめてしまっては、意味がありません。
社員一人ひとりが持つ名刺データがあるのに、活用できなかったらそれは前の状態と変わりません。

実はDXの本番はここからで、「共有した情報をどうビジネスに活かすのか」ということを考えることの方がはるかに重要なのです。
今回の例で言えば、共有された名刺データを元に、新規営業を開拓していく、人脈を有効に活用して利益を生み出す、といったことを行なって初めてDXが実現します。

目的から逆算してDXは進める

DXを進めるために、オンライン化やクラウド化に取り組む企業が多いですが、あくまでオンライン化やクラウド化は手段にすぎません。

DXを実現するためには、オンライン化やクラウド化で蓄積したデータや効率化したリソースを、どのように活用して利益を生み出すのか、それらを使ってどんなことを達成したいのかなどの「目的」を考えてから、ツールやサービスの導入を実施していくことが企業にとって不可欠だと感じています。

これからDXに取り組むのであれば、まずはDXで実現したいことを考えるべきではないでしょうか。

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