採用マーケティングとは?メリットやデメリットから手順まで紹介

DISITOR編集部

採用活動を行っていく中で「採用マーケティング」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。

採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの要素を組み込むこんだ考え方を指します。
この採用マーケティングという考え方は、求職者の考え方の多様性や少子高齢化の影響を受ける日本において、欠かせないものになってきています。

そんな採用マーケティングについては
・採用マーケティングとは
・採用マーケティングに取り組むメリット・デメリット
・採用マーケティングに重要なターゲット
・採用マーケティングを行う手順
などについて詳しく解説していきます。

採用マーケティングについて理解して、採用活動に生かせるようにしていきましょう。

採用マーケティングとは?

採用マーケティングとは、人材の採用活動にマーケティングの手法や考え方を取り入れたものを指します。

「自社が求める人材を細かく設定し、求職者のニーズを分析した上で必要な情報を必要としている人のもとに効率的に届ける」というのが、採用マーケティングの根本的な考え方です。

そのため、従来の求人広告や人材紹介などを活用した採用手法であっても、しっかり分析した上で適切な手法を選択して採用活動を行っているのであれば、それは立派な採用マーケティングと言えます。

しかし、より的確にマッチングするという観点で考えると、SNSや自社メディアなどの自由に発信できるメディアを活用した採用手法が採用マーケティングには適しており、そういった手法を用いた採用活動のことを採用マーケティングと言うケースもあります。

採用マーケティングと従来の採用活動との違い

「どこに意識を向けて採用活動を行うか」ということが採用マーケティングと従来の採用活動の違いとして挙げられます。

従来の採用活動は、「どのような採用手法を選択するか」ということに意識が向けられていました。

そのため、求人サイトへの出稿や人材紹介の活用、採用イベントへの参加などの手法の中でどれをやるのかというのが重要だと考えられていました。

それに対して採用マーケティングは、手法だけではなく、採用活動全体に目を向けて「自社に必要な人材を採用するためにはどうすればいいのか」ということに意識を向けます。

このように従来の採用手法と採用マーケティングには、どこに意識を向けているのかが大きく異なります。

求職者のニーズや採用市場の変化に伴って、採用に対する意識についてもこのような変化が生まれてきました。

採用マーケティングが重要視される理由

採用マーケティングが重要視されるようになった理由には次の3つが挙げられます。

①採用活動の激化
②採用手法の多様化
③求職者のニーズの変化

理由①採用活動の激化

少子高齢化の影響で労働人口は減り、どの企業も人材不足に苦しんでいます。

そのため少ない母数の中から優秀な人材を見つけ出して、他の会社との競争に打ち勝ち、採用まで繋げる必要が出てきています。

こういった状況から、ただ求人を掲載して待つだけでなく、企業側から的確にアプローチする必要が出てきています。

理由②技術の発達と採用手法の多様化

今までは求人サイトや人材紹介を利用した採用が主流でしたが、最近ではSNSや自社のメディアなどを活用した採用手法も一般的になりつつあります。

他にもindeedのような無料で求人を掲載できるサービスなども出てきており、数ある採用手法から適切なものを選択する必要性が出てきています。

こういったたくさんの手法から最適なものを選択するために、採用マーケティングが重要視されています。

理由③求職者のニーズの変化

求職者の価値観は多様化してきています。

「とにかくお金を稼ぎたい」「生活に困らない程度に働いて趣味を楽しみたい」のようにさまざまな価値観で仕事を選ぶようになっています。

そのため、自社に必要な人材のニーズを細かく分析して、うまくアピールしていくことが重要となります。

こういった理由からも採用マーケティングの重要性は高まっています。

採用マーケティングに取り組むメリット

採用マーケティングに取り組むメリットには次のようなものがあります。
①必要な人材や優秀な人材を集めやすくなる
②自社に合った人材とマッチしやすくなる
③うまくいくと採用コスト削減になる

①必要な人材や優秀な人材を集めやすくなる

優秀な人材は転職市場に出てくる前に、友人の紹介などで転職先が決まってしまうことが多いです。

採用マーケティングをおこない、SNSや自社のメディアで求職者に魅力が伝わるような発信をすることで、なかなか市場に出てこない優秀な人材にもアプローチをすることができます。

自社の魅力をうまく発信してターゲットとなる人材に届けることで、転職潜在層と言われる転職を考えていない人材にアプローチすることができて、結果的に必要としている人材や優秀な人材に出会える可能性がアップします。

②自社に合った人材とマッチしやすくなる

求人サイトや人材紹介での募集の場合、どうしても発信できる情報は限られてしまいます。

そのため、「入社してみたらなんか違った」といった事態が起こる可能性があります。

一方で採用マーケティングに基づくSNSや自社メディアでの発信では、多くの情報を発信することができます。

企業の理念や社風、社員のインタビューなどを細かく発信することで、入社前から入社後のイメージを明確に持ってもらえる状態を作ることができます。

こういった発信を見て「自分とは合わない」と感じた求職者からの応募は減り、「自分と合いそうだ」と感じた求職者からの応募が増えます。

そうすることで、自社に合った人材とマッチしやすくなり、入社後の定着に繋がったり無駄な採用活動の時間を削減することができます。

③うまくいくと採用コスト削減になる

採用マーケティングを意識して採用活動を行うことで、「入社後の定着率が上がる」「無駄な広告の費用が削減できる」といった理由から採用コストの削減に繋がります。

ただし、SNSの運用や自社メディアでの発信などは人件費が多くかかり、成功のために必要な知識や経験も幅広いものになります。

しっかりとその辺りのコストも把握した上で適切な手法を選択するようにしましょう。

採用マーケティングに取り組むデメリット

採用マーケティングにはメリットが多いですが、次のようなデメリットもあります。

①新しい手法を導入する場合、成果が出るまでに時間がかかる
②開始初期は人事の負担が大きくなる

①新しい手法を導入する場合、成果が出るまでに時間がかかる

採用マーケティングを行う場合、「考える・分析する」などの時間が以前よりも必要となる場合が多いです。

また、その結果SNSや自社メディアを活用した発信などの手法を選択する場合、それぞれのメディアを育てる必要があります。

これらはすぐに効果が出るものではなく、長期的にコツコツと運用を続ける必要があります。

②開始初期は人事の負担が大きくなる

採用マーケティングを取り入れることで、今までと違った運用のフローや業務が増えることがほとんどです。
そのため、変わった体制に慣れるための負担や、新しい業務を覚えるための負担が増加します。

長期的に見ると、必要としない求職者からの応募が減ったり、効果の悪い手法を削減するなどで効率的になり、負担が軽くなることが考えられますが、導入初期の負担はなかなか大きいものになります。

この辺りについては、経験や知識のある人間がいない場合、外部に頼った方が結果的に無駄なコストを抑えて効率的に進めることができる場合が多いです。

採用マーケティングを行う上で重要なターゲット

採用マーケティングを行う場合、ターゲットへの理解が重要です。

従来の求人広告や人材紹介の場合、多くが転職顕在層と言われる「すでに転職を検討している人」がターゲットとなります。

しかし、採用マーケティングでは顕在層だけでなく、潜在層などさまざまなターゲットの中から適切なターゲットを選択して手法を決めていきます。

採用には以下のようなターゲットが挙げられます。

①転職顕在層
②転職潜在層
③自社の社員
④退職者
⑤過去に不採用になった応募者や内定辞退者

①転職顕在層

転職顕在層は、すでに転職活動を行なっていて、転職サイトに登録していたり、ハローワークを利用したりしている人材のことを指します。
こういった人材には、人材紹介や求人サイトの活用が有効です。

②転職潜在層

「転職サイトやハローワークなどのサービスを利用してはいないが、もしいい会社があれば転職しようかな」と考えている人材のことを転職潜在層と言います。

転職潜在層は求人をみているわけではないので、いくら求人サイトに求人を掲載してもアプローチをすることができません。

人材紹介であれば、ヘッドハンティングというスタイルで転職潜在層に直接アプローチしている企業もありますが、入社決定時に支払う紹介手数料が高いこともあり、継続的に活用できる手法とは言えません。

このような転職潜在層には、自社のメディアでの発信やSNSなどの発信でアピールするのが効果的です。

③自社の社員

自社の社員も採用マーケティングの対象になることを忘れてはいけません。

自社の社員に自社で働く魅力を感じてもらい、SNSなどで発信してもらうことで、転職潜在層へのアピールになります。

場合によっては企業が発信している情報よりも、社員個人が発信している情報の方がユーザーへの影響力が大きくなる可能性もあります。

自社社員の満足度を高めることは、離職率を下げることにもつながるためしっかりとターゲットの一つとして認識しておくようにしましょう。

④退職者(アルムナイ)

採用マーケティングでは退職者のことをアルムナイ(同窓生・卒業生という意味)ということがあります。

そして、一度退職した元社員と関係を継続し、再雇用につなげる仕組みをアルムナイ採用と言います。

元社員の場合、自社の文化やルールを理解しており、戻ってきたらすぐ活躍できるというメリットがあります。
また、他の会社で新たな知識やノウハウを得た状態で戻ってくるということも大きなメリットです。
退職者に対しては戻ってきやすいような制度を構築したり、退職者向けのページを作成するなどして、いつでもウェルカムな状態にしておくのが効果的です。

⑤過去に不採用になった応募者や内定辞退者

一度選考の途中で不採用になった方や内定辞退された方でも、タイミングやスキルの状況によっては、マッチする可能性があるため、採用の候補として考えておくと人材の幅が広がります。

一度応募してきているということは、自社に対して魅力を感じて応募してきてくれている場合が多いので、選考時にネックになった点がクリアされていれば、スムーズに採用までつながるケースも多いです。

「不採用・内定辞退になったからそこで終わり」ではなくそこからも長期的に関係を構築しておくようにしましょう。

採用マーケティングを進めるための手順

ここからは実際に採用マーケティングを進めるための手順について紹介していきます。

採用マーケティングの手順は大きく分けて以下の5つです。

①自社について分析する
②「ペルソナ」を設定する
③求職者のニーズを調査する
④求職者に対して適切なアプローチ方法を検討する
⑤施策の実施と継続的な改善

まず最初に自社を分析して、強みや弱み、求める人材を明確にします。

その情報をもとに採用ターゲットを明確化したペルソナを作成します。
次に設定したペルソナが何を求めているのかを調査して、適切なアプローチ方法を選択します。

最後に設定したペルソナに対しての手法が適切だったかを定期的にチェックして改善を繰り返します。

大まかにこのような流れで進めていきます。

さらにそれぞれ詳しく説明していきます。

①自社について分析する

自社の分析では ・企業理念
・事業内容
・商品やサービス

といったことから
・自社の特徴
・競合の分析
などを行います。

そういった中で、自社の強みと弱みや他社と違う売りとなるポイントなどを明確にします。

今あるデータを調査するだけでなく、インタビューを実施したりアンケートを行うなどをして、通常では集めることができない情報を集めることで、より深く分析をすることができます。

調査会社などに依頼するのも1つの手です。

②「ペルソナ」を設定する

採用マーケティングにおけるペルソナとは、自社の採用したい人物像のことを指します。

ペルソナの設定は「性別」「年齢」「居住地」などだけでなく「趣味」や「性格」などまで細かく設定します。

方法としては現場や経営者に必要な人材ヒアリングし、その情報をもとに設定していきます。また、自社で活躍している人をモデルとして設定するもの一つの手です。

実際に存在する人のように明確に定義することで、関係者同士で共通の認識を持つことができ、採用手法についても適切な手法が選べるようになります。

採用の場合、複数職種やターゲットとなる人材がいるはずなので、それぞれに適切なペルソナを設定しましょう。

③求職者のニーズを調査する

次に作成したペルソナをもとに求職者のニーズを調査していきます。

例えば設定したペルソナが「プライベートを充実させて趣味を楽しみたい」という人であれば、勤務時間が短いことや休日の多さなどを重要視していることが考えられます。

「成長の場を求めている」という人であれば、成長につながる仕事や正当な評価などを求めていることが考えられます。

このようにペルソナをもとにニーズを調査していきます。

④求職者に対して適切なアプローチ方法を検討する

設定したペルソナをもとにアプローチ方法を検討していきます。

ペルソナの性質や年齢などによって、適切な手法は異なってきます。

なかなか転職市場に出てこない優秀な層にアプローチしたい場合は、自社メディアやSNSを活用したアプローチや社員に人材を紹介してもらうリファラル採用などが効果的です。

それぞれの手法を理解して、ペルソナと照らし合わせて最適な手法を選択するようにしましょう。

⑤施策の実施と継続的な改善

ペルソナと施策が定まったら実際に、採用活動を実施して定期的に状況を確認し、ペルソナや採用している手法がマッチしているのかを確認します。

ここでさらに効果を上げるための手法や改善のポイントを考えて施策に反映していることで、効果の最大化を図ります。

これを繰り返し行うことで、自社にマッチしたスタイルを作っていきましょう。

採用マーケティングとは手法ではなく考え方

採用マーケティングは、近年の採用活動において、非常に重要視されていますが、いまいち意味がわかっていない方もいたのではないでしょうか。

採用マーケティングは活用すれば、採用がうまくいく魔法のツールのように思われがちですが、実際は採用成功につなげるための考え方のことを指します。

採用マーケティングの導入には最初は大きな負荷がかかりますが、広い視点でマーケティングの考え方を盛り込んで採用について考えることは、年々労働人口が減少していく日本の採用市場において欠かせない考え方です。

採用マーケティングとは何かを理解した上で実際の業務に落とし込んで、効率的な採用活動につなげていきましょう。