「資格を取ってIT業界への就職を有利に進めたい」
「入社前にITに関する知識を身に付けたい」
と考えて、初心者向けのIT資格の取得を検討している方は多いかと思います。
ただ、IT資格は国家資格からベンダー資格(IT機器を製造販売している企業が提供している資格)まで色々な種類があり、内容も多岐にわたるため、正しく選んで取得しないと時間をかけて取ったのにも関わらず活用できないこともあります。
数ある資格の中から、就職や実務に役立つものを見つけるには、
●IT初心者でも最低限取っておくべき資格を知ること
●将来の業務に役立つ資格が何かを考えること
の2点が必要になります。
ここでは、IT業界未経験者やIT初心者にはどんな資格がおすすめかをタイプ別に解説します。
この記事の目次
IT初心者・未経験者は資格を取るのがおすすめ
IT業界は資格がなくても就ける職種が多いうえに、採用では資格の有無よりも本人の持っているスキルやこれまでの実績が重要視されることから、「資格を得るより経験を積む方が大切」との意見もあります。
確かに、IT業界においては「資格がある=就職・転職に有利」というわけではありません。
先述したように、本人の持っているスキルやできることの方が採用では重要とされています。
ただ、IT未経験者の場合は資格を持っていることで得られるメリットが大きいので、資格を取得することをおすすめします。
一定のIT基礎知識があることを証明できる
経験者の場合、資格がなくても前職の勤務年数や経験から知識・経験をアピールできますが、IT業界未経験者の場合は業務的な経験をアピールするのが基本的に難しいです。
しかし、資格があれば「その資格に合格するだけのIT基礎知識がある」という証明になるので、就職活動でのアピールポイントになります。
また、資格の有無によって就職後の人事に影響したり、その後の評価に直結したりすることもあります。
資格の勉強を通じてITの基礎知識を学べる
IT資格にはITの基礎知識を身に付けられるメリットもあります。
資格合格という目標のもと試験勉強を続けることで、未経験者でも効率よく実務に役立つ知識を学習できます。
特に、自由に使える時間が限られている社会人にとって資格の勉強は独自で進めるより、効率が良いです。
IT業界に就職するなら取っておきたい5つの資格
IT業界といっても、エンジニアやディレクター、マネージャーなど色々な職種があります。
本来であれば、付きたい職種から必要となる資格を見つけて取得するのが望ましいですが、「とりあえずIT業界で働きたい」「まずはITの基礎知識を身に付けたい」という場合は以下の資格をおすすめします。
ITパスポート
ITパスポートは、経済産業省が実施している国家試験の1つで、IT業界でも知名度が高い資格の1つです。
国家試験の中では最も簡単なレベル1に該当するため初心者でも比較的合格しやすく、毎年5割~6割前後が合格しています。
まさにIT業界の入門資格とも呼べる資格で、IT未経験者から大学生、新卒社員などITに関わるあらゆる初心者が受験しています。
試験内容は新しいITの基礎知識や新しいIT技術などに関することから、経営やマネジメントの知識まで幅広く、総合的なITの知識が問われます。
▷ITパスポート(iパス)の公式ページはこちら
基本情報技術者
基本情報技術者はITパスポートと同じ国家資格の1つで、エンジニアの登竜門として実施されています。エンジニア向けの情報処理系の資格はとても種類が豊富ですが、基本情報技術者はその中でも最もスタンダードな資格です。
ITパスポートよりも難易度は高く、合格率は例年3割前後です。
(ただし2020年度春の試験から合格率が5割近くにまで上がっています)
試験内容は、
●コンピューターシステムや開発技術について問われる「テクノロジ系」
●プロジェクトやサービスのマネージメントに関わる「マネジメント系」
●システム・経営の戦略や法務について問われる「ストラテジ系」
の3つに分かれています。
▷基本情報技術者試験(FE)の公式ページはこちら
Internet and Computing Core Certification(IC3)
Internet and Computing Core Certificationは略して「IC3」とも呼ばれるIT資格で、株式会社オデッセイ コミュニケーションズが実施している試験です。
民間の試験といえど、世界78か国・19の言語で行われており、まさに国際的なIT試験といえます。
合格率の公表はないものの、1000点中600~800点で合格できることから、難易度は低く、初心者向けといえます。
試験内容は3科目に分かれており、それぞれOSやソフトウエアなどについて問われる「コンピューティングファンダメンタルズ」、Wordやexcelなどについて問われる「キーアプリケーションズ」、インターネットやパソコンの基礎的な知識などの「リビングオンライン」になっています。
▷Internet and Computing Core Certification(IC3)の公式ページはこちら
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS) スペシャリスト
マイクロソフトオフィススペシャリストは、民間(ベンダー)が提供しているIT資格の中でもとても有名です。
試験内容はマイクロソフトが提供しているツール(Word・Excel・PowerPoint・)
Access・Outlook)が使いこなせるかどうかが問われます。
どの科目を受験するかは自身で選ぶことができるので、よく使うものを選ぶと良いでしょう。
マイクロソフトオフィススペシャリストは「スペシャリスト」と「エキスパート」の2つの難易度が用意されています。
どちらも合格率は非公開となっていますが、「スペシャリスト」は「エキスパート」よりも難易度が低いため合格しやすく、IT初心者でも取得しやすいです。
▷Internet and Computing Core Certification(IC3)の公式ページはこちら
日商PC検定3級・2級
日商PC検定は、商工会議所が提供している試験です。
企業の実務に欠かせないITやパソコンに関する基礎知識の定着を問う試験で、難易度はベーシック・3級・2級・1級の4つに分けられています。
IT業界未経験者や初心者におすすめなのが3級と2級で、3級に合格すると基本的なITやネットワークの知識があること、2級に合格すると実践的なITやネットワークの知識、スキルがあり、部門責任者として知識を利活用できることが証明されます。
3級・2級であれば初心者でも合格しやすく、合格率は3級が8割前後、2級が7割前後となっています。
▷日商PC検定の公式ページはこちら
就きたい職種が決まっている場合は職種に合わせて取得するのもおすすめ
漠然と「IT業界で働きたい!」と感じている場合は、上記で紹介した資格がおすすめですが、すでにどのような職種に就きたいのか決まっている場合は、職種から必要なスキル・資格を逆算して取得するのも効率的です。
IT業界の職種は色々な種類がありますが、
●ITエンジニア(Webエンジニアやサーバエンジニアなど)
●非エンジニア(Webディレクターやセールスなど)
の2種類に分類できます。
どちらの職種に就くかによって初心者が取得すべき資格が異なるのでそれぞれ解説します。
ITエンジニアに興味があるなら言語系やシステム系の資格
ITエンジニアには、Webエンジニア・システムエンジニア・ネットワークエンジニア・サーバエンジニアの4種類があります。
Webエンジニアは、HTMLやCSS、JavaScriptなどを使ってWebサイトを構築するエンジニアのことで、システムエンジニア(SE)は企業が業務や自社のサービスで利用するシステムを構築するエンジニアを指します。
ネットワークエンジニアとサーバエンジニアはその名前の通り、ネットワークを設計・構築して保守と管理を行うエンジニアがネットワークエンジニアで、サーバの設計・構築・保守・運営を行うのがサーバエンジニアです。
このようにITエンジニアといっても細かい業務内容が異なるため、最初に取っておくと良い資格も全くことなります。
Webエンジニアを目指すなら言語の知識などを証明できる資格
Webサイトを構築するWebエンジニアを目指している場合は、Webサイト構築に欠かせない言語の学習を進めつつ、その都度資格を習得するのが良いでしょう。
ウェブデザイン技能検定 3級
Webエンジニアを目指しているIT未経験者におすすめなのが、国家資格となっているウェブデザイン技能検定です。
厚生労働省の指定を受けた機関が行っている検定で、Webに関わるあらゆる人に向けた検定となっています。
検定のレベルは3級・2級・1級の3つですが、IT未経験の場合はまず3級を受験し、経験や知識を蓄積してから2級や1級にチャレンジするのが良いです。
ウェブデザイン技能検定の試験内容は学科と実技に分かれています。
学科ではWeb制作やWebサイトの管理などの知識が問われ、実技ではHTMLやCSSを使ったWebデザインの試験が行われます。
合格率は公表されていませんが、学科・実技ともに7割をこえれば合格することができます。
▷ウェブデザイン技能検定の公式ページはこちら
PHP7初級試験
PHPはWebサイトを構築するために必要なプログラミング言語の1つで、現在はPHP7が最新の言語となっています。
PHP7初級試験は、PHP技術者認定機構が行っているPHP7に特化した試験です。
PHP技術者認定機構はいくつかPHPに関する試験をおこなっていますが「初級試験」という名前の通り、初心者にぴったりの試験です。
試験内容はPHPを使ったプログラミングの基本的な知識となっており、7割正解で合格とされています。
▷PHP7初級試験の公式ページはこちら
Javaプログラミング能力認定試験 3級
Javaプログラミング能力認定試験はサーティファイ情報処理能力認定委員会が行っている試験で、ホームページに動きを加える言語・Javaに関する知識があるかを認定する試験です。
試験のレベルは1級・2級・3級の3種類があるますが、IT未経験者の場合は基礎的な知識の有無と簡単なプログラミングができるかどうか問われる3級から始めるのがおすすめです。
合格率は公表されていませんが、6割以上正解することで合格となります。
▷Javaプログラミング能力認定試験の公式ページはこちら
システム・ネットワーク・サーバのエンジニアの資格
WebエンジニアはWebサイトを構築するのに必要なプログラミング言語の知識があるかどうかを証明する資格が基本でしたが、システムエンジニアやネットワークエンジニア、サーバエンジニアの場合は、情報技術者向けの資格がおすすめです。
応用情報技術者
応用情報技術者(AP)は、前述した基本情報技術者よりもワンランク上の国家資格です。
基本情報技術者試験では基礎的な知識が問われていたのに対し、応用情報技術者では応用的なITの知識が問われるため、取得できればより高度なIT人材としてアピール出来ます。
基本情報技術者試験と同じく、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野で構成されていますが、試験の難易度は高くなっており、合格率は2割ほどとなっています。
▷応用情報技術者の公式ページはこちら
ORACLE MASTER ブロンズ
ORACLE MASTERは、システムの構築に広く活用されているOracle Databaseの管理スキルがあることを証明できる資格です。
日本オラクル社が主催しており、試験の難易度はブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナの4つに分かれています。
合格するごとに上位の試験が受けられるようになっているので、まずは7割正解で合格可能なブロンズの合格を目指しましょう。
システムエンジニア向けの資格ですが、ネットワークエンジニアやサーバエンジニアにもおすすめの資格です。
▷ORACLE MASTERの公式ページはこちら
CCNA(Cisco Certified Network Associate)
CCNA(Cisco Certified Network Associate)は、ネットワーク機器メーカーのシスコシステムズが提供する民間(ベンダー)資格で、ネットワークエンジニアにとってはスタンダードな資格となっています。
合格すればシスコのネットワーク機器が扱えることの証明になるだけでなく、基本的なネットワーク技術をもっていることの証明にもなります。
シスコが行っている技術者認定にはエントリー・アソシエイト・スペシャリスト・プロフェッショナル・エキスパート・アーキテクトの6つがありますが、CCNAはアソシエイトに分類され、日本語で受験できるシスコの資格の中ではもっとも難易度が低いです。
試験は7分野にわかれており、ネットワークの基礎やセキュリティの基礎などが問われます。
▷CCNA(Cisco Certified Network Associate)の公式ページはこちら
Linux技術者認定試験LinuC(LinuC)/LPI認定試験(LPIC)
LinuxとはシステムやOS、サーバの開発に役立つ無料で使えるオープンソースです。
サーバの構築やシステムの開発はLinuxをベースとして行われるため、Linuxの資格があれば、システムやサーバ構築のための一定スキルがあることを証明できます。
Linuxの技術者認定試験はいくつかありますが、日本企業でLinuxを活用する場合はNPO法人のLPI-Japanが提供している日本の市場に合わせた資格試験であるLinux技術者認定試験LinuC(LinuC)、それ以外の企業で働くことを目指している場合はLPI認定試験(LPIC)を受験するのが良いでしょう。
どちらも難易度が3段階に分かれていますが、初心者の場合はLinuC-1かLPIC-1を受験すると良いでしょう。
LinuC-1ではLinuxサーバーの構築と運用・管理ができることなどが、LPIC-1ではLinuxを使っているコンピューターをインストールしてネットワークが構築できることなどが証明されます。
▷Linux技術者認定試験LinuC(LinuC)の公式ページはこちら
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非エンジニア系の職種なら解析やマネジメントに関する資格
IT業界ではエンジニアだけでなく、WebディレクターやWebライターなどのクリエイティブな職種やマネージメントなどを行う職種があります。
ITエンジニアと異なり、未経験で資格がなくても就ける職種が多いですが、資格があれば有利に就職活動が進められることもあります。
ITパスポートは取っておくと良い
非エンジニアの場合は、前述したITパスポートを最初に取得することをおすすめします。
ITパスポートで身に付けた知識はWebディレクターやWebデザイナー、Webライターとして働く場合も役立てられます。
その他取っておくと良い資格
Webアナリスト検定
Webディレクターを目指している人におすすめなのが、日本Web協会がおこなっているWebアナリスト検定です。
WebディレクターはWebコンテンツの制作責任者として、プロジェクトの監督・指揮・管理する仕事ですが、その仕事内容は多岐にわたり、データ分析やアクセス解析を行なって改善点を見つけたり、コンテンツをより良くしていくことも求められます。
Webアナリスト検定では、Webサイトのアクセス解析に欠かせないツールである「Googleアナリティクス」を体系的に学んだり、データ分析の考え方を身に付けられるので、Webディレクターの仕事に役立てることができます。
合格基準は、各分野で4割・トータルで7.5割正解できれば合格できるので、未経験者でもしっかり対策すれば合格できます。
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WEBライティング能力検定
WEBライティング能力検定は一般社団法人日本クラウドソーシング検定協会が行なっている検定試験です。
Webライターを目指している人向けの検定試験で、ライティングの技能だけでなく、近年多くなっているクラウドソーシングへの理解があるかどうかなどが問われます。
合格率は5割と前後ですが、しっかり対策を行えば合格できます。
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まとめ
IT業界未経験やIT企業で働き始めて間もない初心者の場合は比較的難易度が低く、基礎的な事柄が問われる資格の取得を目指すことをおすすめします。
あまりにも難易度が高いと途中で挫折してしまったり、せっかく勉強したのに合格出来なかったなんてことになってしまいます。
IT初心者の方は職種や働き方に合わせて、まずは今回ご紹介した資格の取得を目指してみてください。