プル型とは、英語「Pull(引く)」の意味から、ユーザーが必要な情報を能動的に取得しにいく技術やサービスのことを指します。反意語は、ユーザーの興味の有無を無関係に半強制的に情報を提供する「プッシュ型」です。
プル型はマーケティング分野でもよく使われ、プル型のマーケティング手法をインバウンドマーケティングといいます。インバウンドマーケティングは、売り手が見込み顧客にアプローチしてもらえるよう仕掛ける手法で、顧客を主体としたコミュニケーションによって成り立ちます。
その他、プル型は様々な分野で使われ、受注生産のことをプル型生産方式、ユーザーからのリクエストによって配信する方式をプル型配信などといいます。
プル型に対し、逆に、ユーザーの興味や意思に関わらず、半強制的に情報を配信するものをプッシュ型といいます。プッシュ型メディアの例としては、大衆向けに配信されるテレビやラジオがあり、プッシュ型の広告の例として、バナー広告やダイレクトメールなどが挙げられます。
また、プッシュ型のマーケティング手法をアウトバウンドマーケティングと呼びます。企業主体の情報発信で、売り手が顧客に直接的にアプローチを仕掛ける手法です。例えば、テレマーケティングやダイレクトメールを通し、顧客の興味や意思に関わらず情報を発信します。プル型のマーケティングに比べると、多くのユーザーに対し同様の情報配信をおこなうためコストはかかりますが、認知度の向上やブランディングの効果が見込めるというメリットもあります。
プル型のマーケティング戦略を「プル型戦略」という
プル型戦略とは、マーケティング分野において、消費者の自発性やニーズを尊重し、見込み顧客が自発的にアプローチしてくれるように仕掛けるというプル型のマーケティング戦略のことです。インバウンドマーケティングと呼ばれることもあります。
自社製品やサービスの魅力を前面に推し出す情報発信ではなく、顧客の課題に対する解決策を示したり、課題そのものを認識させるような広告やコンテンツを配信するのが主流です。
また、プル型戦略では、SEO施策やリスティング広告などを用いて、より目的が明確で有望な見込み顧客を取り入れ、アプローチをしてもらえるよう仕向けることも多いのが特徴です。
プル型戦略のメリット
プル型戦略のメリットとして、大きく3つ挙げます。
①運用コストが安いことです。プル型戦略ではターゲティングが可能で、不特定多数のユーザーでなくピンポイントに施策が打つことができます。
②見込み顧客からアプローチが得られるため、コンバージョン率が高いことです。プル型戦略で集められる顧客は能動的にアプローチしてきた顧客であり、すでに自社の製品への興味や明確な目的を持っていることが多く、購入につながりやすいという特徴があります。
③初期段階でターゲットを絞れなくても、徐々にターゲットが明確化されることです。見込み顧客は自発的にアプローチしてくれるため、プル型戦略を続けるうちにターゲットの特徴がつかめるかもしれません。
プル型戦略のデメリット
プル型戦略のデメリットとして、大きく3つ挙げます。
①プッシュ型戦略に比べ、認知されにくいことです。プッシュ型戦略はユーザーの興味の有無に限らず情報を発信しますが、プル型戦略では興味のあるユーザーが自らアプローチしてくれるように仕掛けます。そのため、関係の持つことができるユーザー数は限られてしまい、多くの人に情報を配信することは難しいです。
②ブランディングされていないと効果が出にくいことです。認知・ブランディングされていない無名の商品は、もしユーザーに見つけられたとしても購入されにくいでしょう。
③顧客との関係構築に時間がかかることです。プル型戦略はあくまで顧客主体のコミュニケーションであり、ユーザーからのアプローチがないと関係が築きにくいです。
「より興味の高いユーザーを集めるためにプル型のアプローチしよう」
リスティング広告やSEO施策を通して検索順位を向上させることはプル型戦略の1種です。プル型で集客できたユーザーは目的や関心が明確で、よりコンバージョンにつながる可能性の高いユーザーが多いです。
「プル型の広告を使って潜在層にアプローチできないかな」
自社の商品を前面に出さず、顧客に課題や悩みを意識させて自社へのニーズを高めるような広告もプル型の広告です。ターゲットの明確化とコンテンツ力が必要です。
「プル型の営業スタイルを取り入れてみよう」
近年、プッシュ型だけでなく、プル型を取り入れる営業が増えています。積極的に顧客の元に足を運んだりテレアポをとって訪問したりするプッシュ型の営業に対し、プル型の営業はリスティング広告やソーシャルメディア、自社サイトなどを通して顧客からアプローチがあるように仕掛けます。
「プル型もプッシュ型も大事だね」
近年プル型のマーケティング施策が注目されていますが、プッシュ型のマーケティングが重要でなくなったわけではありません。両方の特性を生かして、時には組み合わせながら施策を考えることが大切です。
近年プル型が求められるようになった理由とは
近年プル型が求められるようになった背景として、インターネットが普及し、個人でも多くの情報に触れることができるようになったことが挙げられます。
今まで、消費者はマスメディアなどから一般大衆に向けた情報しか受信できなかったのに対し、今や多くの情報の中から自分が欲しい情報をネット検索などを通して自分で精査しながら手に入れることができるようになりました。プル型戦略は、そういったユーザーに対しユーザーが求める良質なコンテンツを届けることで、より興味・関心の高いユーザーにピンポイントでアプローチでき、コストや効率面で効果的なマーケティング手法として注目されるようになりました。
プル型とプッシュ型を組み合わせた戦略もある
実際のマーケティングでは、プル型とプッシュ型の両方を組み合わせておこなわれる施策も多いです。
例えば、自社のホームページやSNS、アプリなどの自社メディアを用いて情報を発信しながらターゲットに合わせた広告の発信をするという方法が挙げられます。プル型の施策と比べるとコンバージョンの獲得即効性は見えにくいですが、認知拡大やブランドロイヤルティの向上、見込み顧客の獲得が見込めます。
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